木材のよさを引き出す塗装 – 塗料の違い
どの塗料がどの木材に合うのか知りたいと思いました。今回は6つの塗料と5つの木材を組み合わせてみました。いつもより多く塗っております。(^^)/
はじめに
売場に行くと色々な塗料があります。どっちがいいの?何が違うの?と思いませんか。色々と試しているうちにネタがたまりました。
ゴールは「木材のよさを引き出す塗装」です。チークやウォルナットは家具にも使われる高級な木材です。これらの木材をどうやったらもっと高級にできるか検証しました。一方でブナはやさしい感じを持つ木材です。子供向けの遊び道具によく使われます。ブナのそのやさしさを引き出すには何を塗ればいいのか色々探しました。SPFやラワンは木材というよりも建材かもしれませんが、それでも何かいい塗料はないものかと思いました。これらの木材への塗料を検証すると、意外な相性があることがわかりました。
私の木材塗装のゴールはこんな感じです。これらの写真は以前に書いた「ド素人の木材塗装その2 ワトコでオイルフィニッシュ」のものです。
ところで、この写真の椅子はミース・ファン・デル・ローエによってデザインされた「バルセロナチェア」 というものです。この投稿を書いた時には知りませんでした。
ワトコ W-01 ナチュラル
当ブログでおなじみのワトコです。
色がいくつかあるのですが、今回のテーマは木材のよさを引き出す塗装なので、ナチュラルのみで検証しました。塗り方は「ド素人の木材塗装その2 ワトコでオイルフィニッシュ」を見てください。
キヌカ
キヌカはお米から作られた自然塗料です。
基本的にはワトコと同じオイルフィニッシュの塗料です。比べてみました。
ワトコ | キヌカ | |
色の種類 | 10種類ほどある | 1種類のみ |
臭い | 臭い (10日程で消えます) | なし |
粘性 | 少しトロトロしている | 少しトロトロしている |
塗装用具 | 油性用刷毛とウエス | ウエスのみ |
自然発火 | する | しない |
人の肌への刺激 | 特に明示していない | 安全性を実験で証明している |
塗装回数 | 2回 | 1回 |
キヌカの特徴は塗りやすさです。特に塗装に詳しくなくても簡単にオイルフィニッシュできます。
項目の中の「自然発火」についてはちょっと気になりますね。ワトコが服についたまま乾燥機にかけたり(日本電機工業会)、ワトコを拭いたウエスを真夏にそのままゴミに出したりして、たまたま猫よけのペットボトルでも横にあれば、自然発火もするでしょう。具体的な事故は知りませんので想像ですが・・・。
オスモ 3101 ノーマルクリアー
木工愛好家だけではなくプロも使う塗料です。塗り方は「オスモカラーの塗り方と塗装サンプル画像を見てください。
ワシン クリヤーラッカー
前から気になっていたラッカーもこの際テストすることにしました。私はラッカーとニスの違いがよくわからなかったのです。それどころか、ラッカー、シンナー、スプレーの違いがよくわからなかったのですが(笑)。
ラッカーとニスの違い
塗り方は水性ウレタンニスと同じなのですが、必要な道具が違います。
比較ポイント | 水性ウレタンニス | ラッカー |
粘性 | ほんの少しトロトロしている | 練乳みたいにトロトロしている |
刷毛 | ニス専用刷毛 | 油性用刷毛 |
塗料の薄め液 | 水道水 | ラッカー薄め液 |
塗り方 | 2, 3回重ね塗りする | 2, 3回重ね塗りする |
シーラー | なくてもなんとかなる | あったほうがいい |
刷毛の洗い方 | 水道水で洗う | ラッカー薄め液もしくはシンナーで洗う |
乾燥時間 | 2時間 | 1時間 |
ラッカー薄め液とシンナーについては別途書こうと思います。
この表を見るとラッカーを使うメリットがわかりません。ラッカーは何のためにあるのでしょうか。理由を考えました。
- 待ち時間短縮のため
工業製品を生産するには乾燥時間が短い方がいいはずです。 - 昔の雰囲気を出す
昔の塗装はラッカーが中心でした。よって昔の家具を再現するにはラッカーが必要です。Wikipediaによると、ラッカーが使われていたのは紀元前7,000年頃~1950年だそうです。それ以降はウレタンが使われるようになったそうです。ウレタンはかなり新しい素材なのです。 - 音の吸収や反射がニスとは違う
楽器への塗装は音の吸収(反射)に影響します。ラッカーとニスでは変化が異なるでしょう。楽器の塗装に使われるラッカーには色々ありますので、興味のある人は「セラック」で検索してみてください。原材料は意外なものです。(^^;
ワシン水性ウレタンニス
私が塗装を初めて間もない頃から使っているニスです。使いやすい塗料です。塗り方は「ステインと水性ウレタンニスの塗り方」を見てください。
アサヒペン 水性高耐久2液ウレタンニス
私は前から2液ウレタンが気になっていました。将来的には家具を作ってみたいと思っているのですが、テーブルを作るには丈夫な塗装が不可欠だからです。
アサヒペンの2液ウレタンニスは木固めエースよりも簡単に塗れます。またホームセンターや東急ハンズで手軽に入手できる塗料です。ワシンも2液ウレタンニスを販売しているのですが、売場のサンプルがあまり好きにはなれませんでした。プラスチックみたいな仕上がりでした。良い意味でも悪い意味でもファーストフードのテーブルです。(丈夫だが上品ではない) そこで私は木固めエースを試したのですが、2液ウレタンの方が簡単で十分丈夫です。
中身と塗り方
主剤と硬化剤をまぜるだけです。混合比は主剤5:硬化剤1です。まぜるとニスになります。ワシンのニスとそっくりです。塗り方も同じです。
箱の中には硬化剤が2つ入っていますが違いはありません。シェーカーというラベルのついた容器は硬化剤と主剤を一度にまぜるためのものです。
外箱の説明では一度に使い切るよう書かれていますが、私は少量しか使わないので、いつものようにスポイトで必要量だけ混ぜました。一度硬化剤を開けても硬化剤は硬化しません。開封してから3か月以上経過していますが問題ありません。
木固めエース
プロが文化財の修復に使ったり、学校給食の容器に使われたりする塗料です。詳細は「木固めエースの塗り方とサンプル画像」を見てください。
木材
今回は5種類の木材を検証しました。すべての木材を400番の紙やすりで研磨しました。紙やすりと番目について詳しくは「ド素人の木材塗装その2 ワトコでオイルフィニッシュ」を見てください。
SPF
ホームセンターでよく売られている木材です。SPFとは、スプルース(spruce)、松(pine)、もみ(fir)の事です。売り場で売られているSPFと書かれた木材はこれら3種のうちのいずれかですが、いずれも似ているため同一品として売られています。詳しくは「ド素人が木材塗装を始める」を見てください。
ブナ
優しくて柔らみのある木材です。特に北欧の家具によく使われます。子供向けの遊び道具(遊具や積木など)はブナで作られることが多いように思います。優しくて柔らみのあるイメージとは逆で、実は丈夫な木材です。
乾燥を充分にしたブナ材は、相当な耐久力が備わります。 – 村山忠親 木材大辞典185種 P.76
乾燥というのは木材の伐採後から流通前の話だと思われます。塗装の前後ではありません。
赤ラワン
SPFと同じく、ホームセンターでよく売られている木材です。ベニヤ板は大体ラワンでできています。私はラワン、ベニヤ、ベニヤ板、合板(ごうはん)の違いがよくわかりませんでした。せっかくなのでまとめました。
名称 | 意味 |
ベニヤ | スライスした木材のこと。何かの表面を木目にしたいとき、その表面に貼られます。突板(つきいた)とも言います。 |
合板(ごうはん) | ベニヤを何層かに接着した板のこと。使われる木材はラワンやシナが多いようです。合板を使うとカーブ状に曲がった板を作れます。また合板は木材の反りや割れを防ぎます。私は合板を作成する理由は、安い木材を寄せ集めてコスト削減することかと思っていました。本当かどうかはわかりませんが。 |
ベニヤ板(いた) | 本来ならばベニヤを張り付けた板のことです。日本では合板と同じ意味で使われますが、これは間違いだそうです。 |
ちなみに私が「赤ラワン」と呼んでいるものは、正しくは「白ラワン」です。ホームセンターで売られている白いラワンのうち、赤っぽいものを「赤ラワン」と呼んでいます。赤っぽいものと白っぽいものでは仕上がりがかなり違うためです。学術的に「赤ラワン」と呼ばれている木材はほとんど流通していないそうです。
入荷量が少なく、あまり市場に出ません。 – 村山忠親 木材大辞典185種 P. 65
チーク
世界三大銘木の1つです。非常に摩耗に強い木材として有名です。
チーク材の最大の特徴は材面がワックス状の物質で覆われていることで、摩擦に対する対摩耗性が強いことです。塗装などする必要がなく長時間の雨曝しでも材質が変わりません。 – 村山忠親 木材大辞典185種 P.170
ウォルナット
こちらも世界三大銘木の1つです。少し紫色をした木材ですが、経年変化で茶色になるようです。磨耗に強いです。こちらも家具によく使われます。
加工は容易で、衝撃、磨耗に強く乾燥後は強靭な材質になります。木目が美しいので生地仕上げに向き、家具材、彫刻、工芸品、内装用化粧合板として重視され、最高級の折紙がつけられています。 – 村山忠親 木材大辞典185種 P.97
なお、世界三大銘木の最後の1つはマホガニーです。
とても有名な木材です。見た目はラワンと大差がないように見えますが・・・。 (^^;
世界三名木の1つであるマホガニーの材質は、天然や人工の乾燥による狂いはほとんどなく、乾燥後も適度な強度を保ち腐れや磨耗に強い性質をしています。木肌も木目細かく金赤褐色の仕上げは家具材の最高峰とされています。年代を経ると特に色合いが美しくなり、色調にある有名なマホガニー色は、この材の色のことをいいます。 – 村山忠親 木材大辞典185種 P.108
検証結果
木材と塗料にはかなり相性がありました。
ワトコ W-01 ナチュラル | キヌカ | オスモ 3101 ノーマルクリアー | クリヤーラッカー | 水性ウレタンニス 透明クリヤー | 水性ウレタンニス つや消しクリヤー | 2液ウレタンニス | 木固めエース | |
SPF | × | × | × | × | × | × | × | × |
ブナ | × | ○ | ○ | △ | △ | △ | ○ | △ |
赤ラワン | × | × | ○ | × | × | × | △ | △ |
チーク | ◎ | ◎ | ◎ | × | × | × | ◎ | ◎ |
ウォルナット | ◎ | ◎ | ◎ | × | × | × | ◎ | ◎ |
塗料ごとに思ったポイントです。
塗料 | 必要スキル | 臭い | 準備と片付けの手間 | 丈夫さ | 塗装回数 | 価格 |
ワトコ | △ | × | △ | ○ | 2 | 333円 |
キヌカ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | 1 | 150円 |
オスモ | ○ | △ | △ | ○ | 1 | 533円 |
クリアーラッカー | × | × | × | × | 3 | 692円※1 |
水性ウレタンニス | ◎ | ◎ | ◎ | × | 3 | 360円※1 |
2液ウレタン | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | 2 | 2382円 |
木固めエース※2 | × | × | × | ◎ | 3 | 1130円~2260円※2 |
左の4項目はいずれも主観です。(^^; 丈夫さについては、爪を立ててこすった感想です。相当意地悪をするとどれも跡になりますが・・・。塗装回数はメーカー推奨回数です。今回の検証もこの回数だけ塗っています。価格は1m2を仕上げるため(塗装回数分塗るため)の価格です。お店で購入した価格を元にしました。
※1 1回目にサンディングシーラーを使った場合の価格です。
※2 E液 (シンナー)を合算しました。本日までの利用量はA液30%、E液16%でしたので、E液0.5缶を加算した価格にしました。またA・E共に必要量は、木材によって大きく変わります。
表の続きです。
塗料 | Goodポイント | Badポイント |
ワトコ | 高級木材が映える | 色の白い木材が黄ばむ※3 |
キヌカ | 簡単に塗れる | 色が1色しかない |
オスモ | 高級木材が映える | オスモが導管に少し残る |
クリアーラッカー | なし※4 | 塗装が難しい |
水性ウレタンニス | 簡単に塗れる | チープな色合いと質感になる※5 |
2液ウレタン | 簡単に塗れる | 値段が高い |
木固めエース | 高級木材が映える 丈夫 |
塗装が難しい 値段が高い |
※3ワトコの品揃えには「ホワイト」があります。ナチュラルで比べるのが間違っています。(^^;;
※4 それでも使う理由は前述の通りです。
※5 SPFや赤ラワンといった安い木材には上品に塗れるので助かります。(^^)/
SPF
どの塗料もSPFには向きません。(T_T) それでもSPFに塗装するのならワシンの「ポアーステイン」と「水性ウレタンニスつや消し」に限ります。詳しくは「ステインと水性ウレタンニスの塗り方」を見てください。
ワトコは黄色っぽくなります。もしカントリー風の塗装と言うのでしょうか・・・。まさにオイルが染みた色です。キヌカは元の色をほとんど変えずにオイルフィニッシュできます。
オスモは思ったより丈夫です。2液ウレタンよりも爪痕は残りにくいです。そして表面の色合いも自然かつ触感もすべすべしていて気持ちいいです。ラッカーは水性ウレタンニス 透明クリヤーと同じ仕上がりです。
水性ウレタンニスは光を反射しますが、つや消しクリヤーは頑張って抑えています。透明クリヤーでは「日曜大工で塗装してみました」という感じが全面に出てしまいます。(^^;;; これらの塗料を使えばSPFは丈夫になるかと期待したのですが・・・簡単に傷がつきました。ちょっと爪を立てて表面を押すと簡単に跡になってしまいます。SPF反射
どのくらい光が反射するのか検証しました。反射のない順に並べました。
ブナ
ワトコを除いてどの塗料も自然な仕上がりです。
ワトコだと黄ばんでしまいます。それ以外はどちらも同じです。爪で押したり引っ掻いたりすると跡になりますが実用に耐えられます。跡がわかるのは- かなり強めに押す
- 光を意図的に反射させる
- 目を近づけて見る
これらをすべて満たした場合だけです。
オスモの仕上がりはキヌカを少し濃くしてすべすべにした感じです。爪痕についてもワトコやキヌカと同じです。ラッカーは光の反射が強いです。何かの塗料でコーティングしました、という感じがします。爪痕が多少残ります。
プラスチックのような風合いになりました。それでも爪痕が簡単に残ります。 どちらの塗料も爪跡がまったく残りません。木固めエースは色が濃くなりました。赤ラワン
ここでもワトコはオイルが染み込んだ感じになります。一方キヌカは導管(横方向の木目。濃い部分です)に十分浸透しませんでした。そのため色がついていない部分があります。 オスモもそこまで浸透力がないため、導管に色がついていない部分があります。しかし色合いはワトコやキヌカよりも上品に感じます。ラッカー塗装は意外に良い仕上がりです。爪痕が多少残りますが、もともと導管が凹凸しているため目立たないように思います。
導管に色がついていない部分が多くあります。また色合いにメリハリがありません。 2液ウレタンの色合いは水性ウレタンニスと同じでメリハリがありません。木固めの色合いはオスモに近いのですが、オスモの方がいいように思います。どちらの塗料も爪痕は全く残りません。
チーク
どちらも素晴らしい色合いです。そして爪痕は全く残りません。チークは堅い木材なのですが、ここまで丈夫になるとは驚きました。 オスモはワトコやキヌカとそっくりです。色合い、感触、丈夫さなど、違いがわかりません。残念なのは導管が所々白くなることです。導管に詰まったまま固まってしまうようです。ラッカーの塗装はとても難しいです。ドロドロなのにも関わらず、薄く何度も塗る必要があるようです。スプレー塗装する必要があるように思います。爪で強くこすると跡になります。
結局うまく塗れませんでした。すみません。m(__)m
それにしても・・・色はとても綺麗です。
どちらの塗料もローコントラストな色合いです。チークの良さが台無しです。さらに爪痕が簡単に残ります。 2液ウレタンの色合いは水性ウレタンニス(つや消しクリヤー)と木固めエースの中間位です。爪を立ててかなり強く引っ掻くと少しだけ跡がつきます。木固めエースは最高の出来です。色合いが美しく丈夫です。爪痕がつけられません。これなら家具の塗装に使えます。
ウォルナット
チークと同じくどちらも素晴らしい色合いです。キヌカでは爪痕が白っぽく残ってしまうのですが、指でこすると爪跡は消えます。不思議です。 オスモの色合いは落ち着いています。ウォルナットがもともと暗い色なので、あまり色を暗くしたくない人にはいいと思います。チークと同じく、導管に白い部分が残るのが残念です。ラッカーの色合いは綺麗です。反射は不均等になってしまいました。うまく塗装ができればいいなと思いますチークと同じく、爪で強くこすると跡になります。
チークと同じ感想です。どちらの塗料もローコントラストな色合いです。爪痕が簡単に残ります。 こちらもチークと同じ感想です。木固めエースは特に素晴らしい出来です。チークやウォルナットを使って何か作り、木固めエースで仕上げたいと思います。もし本記事に興味、ご関心があれば、ぜひ「塗装」の記事一覧を見てください。例えばこんな記事があります。
- ド素人の木材塗装その2 ワトコでオイルフィニッシュ
私は塗料売り場でたまたまワトコのオイルフィニッシュを目にしました。オイルフィニッシュという名前が職人っぽく、職人っぽければ仕上がりもいいだろう、という安易な考えで購入してみました。 - ステインと水性ウレタンニスの塗り方
との粉、ステイン、水性ウレタンニスの塗り方です。サンプル画像を多く載せつつ、手順と注意点を整理しました。 - オスモカラーの塗り方と塗装サンプル画像
これまで水性ニスとワトコを試しましたが、どうしても手が出せなかった塗料があります。それがオスモです。その理由は・・・高い(と思った)からです。 - 木固めエースの塗り方とサンプル画像
木固めエースという塗料を聞いたことがありますか?DIY愛好家だけでなくプロが文化財の修復にも使う塗料だそうです。私はインターネットで検索していて知りました。
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