無知の知を知ろう

「8月は暑い?寒い?」と聞かれたらどう思うだろうか。我々は知らないという事を知らない。それが故に思い込み、恐れ、善悪を定義するのだ。

「多くの視聴者は判断を行わずに真実として受け入れている。そもそも、判断するというステップが存在しない。」 これは前回のブログに書いた一言だ。そう、私が問題だと思うのは判断するというステップが存在しないことだ。そのステップがなければ検証が始まらない。それどころか検証を終えたことになり自分の考えの一部に取り込んでしまう。これはまさにメディアによる洗脳である。

決して「すべてを疑え」とは言っていない。そんな表現はむしろ陳腐だと思っている。疑うことは手段ではない。疑い始めると心の平静と調和を乱しかねない。またメディアがあなたを洗脳していると言いたいのでもない。

私が言いたいのは、あなたは見聞きしたことを無意識に情報処理している事を、あなたに自覚してほしいという事である。例えば「8月は暑い?寒い?」と聞かれたらどう思うだろうか。北半球に住んでいる人は前者だろうし、南半球に住んでいる人は後者だろう。もし「どの地方の8月だろう?」と思った人はセンスがある。

何か見聞きした時に、以下の4つのポイントを考えてみてはどうだろうか。

1つ目は、自分には知らないことがあるということを自覚するよう心がけることだ。私はセキュリティについて調査していくうちに、いかに自分が知らなかったのかということを痛感した。自分がセキュリティについて人に教えようとすればするほど、むしろ自分が知らなかったことを勉強することになった。

2つ目は思い込みかどうかを考えることだ。人はこれまでの経験を判断材料にすることが多い。経験を判断材料にすること自体に問題はないし、前回のブログに書いたとおり経験は検証手段である。しかし経験が少なかったり偏っていたりする場合は思い込みになる可能性が高くなる。例えば女性は常に顔や頭に被りもの(以下ブルカ)をする環境で育った人は、ブルカをしていない女性を見ると違和感を感じるだろう。逆に女性がブルカをしない環境で育った人は、ブルカをしている女性を見ると違和感を感じるだろう。その違和感こそが思い込みなのだ。女性があるべき姿を思いこんでいる。

なお、思い込みが大きくなると偏見になり、偏見が大きくなると差別になる。思い込みが偏見や差別になると恐怖を生み出す。ブルカの有無が法律に反する国は、ブルカと向き合っているのではなく恐怖と向き合っているのだ。法律で規制しなければ社会秩序を保てないと恐れているのだ。

ところで、あなたはブルカを法律で規制している国について知っているだろうか。ブルカを着用「しないといけない」のはイスラム系の国々だ。一方でブルカを着用「してはいけない」のはヨーロッパの国々だ。イスラムとヨーロッパの戦いの歴史を思えば無理もない。幸いなことに東京ではブルカを着用しても偏見や差別の対象にならない。思い込みはあるだろうが。

これは先ほどの「8月は暑い?寒い?」と同じ質問である事に気付いてほしい。ブルカを法律で規制している国について、イスラムとヨーロッパ両方をイメージできた人はセンスがある。

3つ目は恐れていないかどうかを考えることだ。多くの人は病院、特に歯医者へは行かないし行きたくもない。それは嫌な結果を知るのが怖いからだ。そして聞いてもいないのに理由を答える。「お金がない」、「時間がない」、「痛くない」などなど。特にタバコを吸う人はその傾向が高い。それでもまだいい方だ。問題なのは病院を勧めると機嫌が悪くなったり怒り出したりする人だ。このような人は情報処理できずに感情的になってしまっているのだ。

4つ目は善悪で捉えていないかどうかを考えることだ。世の中には善悪などない。あえて言えば全ての物事は中立である。ポジティブ(明るい性格)であれば善、ネガティブ(暗い性格)であれば悪ということもない。真面目や努力、忍耐は善でも悪でもない。究極的には殺人行為も善でも悪でもない。ただの違法行為であるが、それ以上でも以下でもない。

これらの4つのポイントを考えた上で自分の意思を決定して欲しい。これらの4つのポイントが正しいかどうかではない。特に4つ目の殺人行為については悪だと言う人が大多数だろう。もしあなたもそう思うのであれば、少し考えてほしい。あなたは人間が死ぬとどうなるのか知っているだろうか。また、それを知らないということも知っているだろうか。1つ目のポイントを思い出してほしい。私は上げ足を取っているのではない。

我々人類は未知なものを「こういうものだ」と思い込み、恐れ、悪者扱いする。我々が成長していくにあたって一つの課題である。

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